「前任者と連絡が取れない」「誰が何で作ったのかわからないサイトを直したい」。制作会社の方から、こうした相談をいただくことがあります。素性のわからないコードは、確かに気を使います。ただ、いきなり触るのではなく段取りを踏めば、他社が作ったサイトでも崩さずに改修できます。この記事では、私が引き継ぎ案件で実際にやっている進め方を、そのままお見せします。

なぜ「怖い案件」になるのか

引き継ぎがやりづらいのは、技術が難しいからではありません。どこを触ると何が起きるかが見えないからです。

  • ドキュメントがなく、構成が頭の中にあった人がいない
  • 一見関係なさそうな箇所が、裏でつながっている
  • 前任者独自の書き方で、素直に読めない

この不透明さを一つずつ潰していけば、怖さの正体はかなり小さくなります。順番が大事です。

まず現状を把握する

最初にコードを書き換えることはしません。まず全体を読んで、何で動いているサイトなのかを掴みます

  • どの技術で作られているか(WordPress か、静的サイトか、フレームワークか)
  • どこにデータがあり、どこで表示が組み立てられているか
  • 更新や公開の流れはどうなっているか

ここで得た地図がないまま手を入れると、勘での編集になり、別の場所を壊します。急がば回れで、読む時間を惜しまないのが結局いちばん早いと感じています。

安全に引き継ぐ手順の4ステップ

影響範囲を確認してから触る

直したい箇所が決まったら、そこを変えるとどこに波及するかを先に洗い出します。共通のテンプレートやスタイル、共有された処理は、一箇所の変更が全ページに及ぶことがあります。

  • その部品は他のどのページで使われているか
  • 変更が表示・動作・SEO のどれに関わるか
  • 消してよいコードか、実は必要なコードか

「関係ないはず」で進めて足をすくわれるより、確認に少し時間をかけるほうが、結果として手戻りが減ります。

戻せる状態を先に用意する

手を入れる前に、いつでも元に戻せる状態を作っておきます。バックアップと、変更履歴を残す仕組みです。

  • 現状のファイルとデータを丸ごと控える
  • 変更はまとめず、意味のある単位で記録する
  • 何かあれば一手で前の状態へ戻せるようにする

戻せる安心感があると、思い切って直せます。逆に戻せない状態での改修は、慎重になりすぎて前に進みません。

小さく直して、都度検証する

ここまで整えたら、いよいよ改修です。大きくまとめて変えず、一箇所ずつ直して、その都度確認します

  • 一つ変えたら、その画面と周辺を目視で確認する
  • 表示崩れ・リンク切れ・フォーム送信など、動く部分を試す
  • 問題なければ記録を残し、次の一箇所へ進む

小さく進めれば、もし不具合が出ても原因はさっき触った箇所に絞れます。切り分けが速いほど、修正も速くなります。

いきなり触る進め方と段取りを踏む進め方の比較

崩さず直せたら、高速化まで踏み込む

引き継いだサイトは、表示が重いことも少なくありません。安全に触れる状態まで持っていければ、その先の高速化にも踏み込めます。

私が自分のサイトで効果を実感しているのは、画像とキャッシュまわりです。

  • 画像を適切なサイズと形式で配り、表示領域に合った大きさで読み込む
  • 一度読み込んだものを無駄に取り直さないよう、キャッシュを整える
  • 表示に不要な読み込みを後回しにして、最初の描画を軽くする

このあたりは、表示速度とCore Web Vitalsの話でも触れています。数値は環境で変わるので断定はしませんが、画像の出し方を整えるだけでも体感は変わります。

引き継げるコードにして返す

改修して終わり、ではありません。次に誰が触っても困らないよう、引き継げる状態にして返すところまでが保守だと考えています。何を変えたか、どういう構成かを残しておけば、次の担当が同じ怖さを味わわずに済みます。この考え方は引き継げるコードの書き方にまとめました。

そもそも古い作りで改修が難しい場合は、無理に延命せず作り直しを検討したほうが早いこともあります。判断材料はWordPressから移行するかの見極めを参考にしてください。

前任者不在のサイトも、任せてください

他社が作ったサイト、素性のわからないコード、前任者と連絡がつかない案件。こうした「触るのが怖い」案件こそ、段取りを踏んで安全に引き継ぎます。現状把握から影響範囲の確認、バックアップ、小さく直して検証、そして高速化まで、崩さずに進めます。

改修や保守の外注先を探している制作会社の方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。現状のサイトを見せていただければ、どこから手を付けるかの見立てをお返しします。

本記事は2026年7月時点の情報です。表示速度などの数値は環境によって変わるため、実際の効果はサイトごとに検証します。