「WordPressから移ったほうがいいですか?」。リニューアルの相談で、こう聞かれることがあります。私はこのサイト(tsudzuri.com)をEmDashで作っていますが、答えはいつも「サイトによります」で、そのあとに理由を続けます。

WordPressは20年以上使われてきたCMSで、プラグインも情報も、頼める制作会社も多い。Astro × EmDashは表示を軽くしやすく、サーバー側の更新を減らせる一方で、まだ新しく、情報も扱える人も少ない。どちらにも得意と不得意があります。この記事では、続けるか移るかを決めるための判断軸を、両方の弱みも含めて並べます。

WordPressの強みは、積み上がった資産と人の多さ

WordPressのいちばんの強みは、長い年月で積み上がった資産で、やりたいことの多くは、すでにあるプラグインの組み合わせで実現できます。

プラグインで機能を足せる

会員登録、ネットショップ、予約、多言語。ゼロから作れば何週間もかかる機能でも、プラグインを入れて設定すれば動くことが多いです。機能の多いサイトほど、この強みは大きくなります。

情報と、頼める人が多い

困ったときに検索すれば、日本語の解説がたいてい見つかります。保守を頼める制作会社も、社内で触れる人も見つけやすい。担当者が替わっても引き継ぎやすいのは、長く使われてきたCMSならではです。

管理画面に慣れている人が多い

投稿画面の使い方を知っている人が多く、更新担当への説明が短く済みますが、別のCMSに替えるとこの慣れはいったんゼロに戻ります。

運用で起きやすい課題と、WordPressのままでできる対策

「表示が遅い」「改ざんが心配」という声の多くは、WordPressそのものより、構成と運用が原因です。WordPressのままでも手は打てます。

課題

主な原因

WordPressのままでできる対策

表示が遅い

プラグインの積み増し、重い画像、キャッシュ未設定

不要なプラグインの整理、画像の最適化、キャッシュの導入

改ざん・乗っ取り

更新されないプラグインやテーマの放置、弱いパスワード

自動更新、使っていないプラグインの削除、2段階認証、WAF

更新で表示が崩れる

プラグイン同士の相性

ステージング環境で試してから本番へ反映

PHPの脆弱性

サーバーのPHPが古いまま

サーバー会社の案内に沿って修正版へ更新

WordPressの公式ドキュメントにも、セキュリティを固める手順や自動更新の設定がまとまっているので、保守の体制が回っていれば、WordPressは十分に安全に運用できます。

もう一つの選択肢:Astro × EmDash

Astro × EmDashは、Astro(サイトを組み立てる仕組み)の上で動くCMSです。EmDashは2026年にCloudflareが公開したもので、PHPを使わずに動きます。このサイトもこの構成で、Cloudflareの上で動かしています。

WordPressとAstro × EmDashの違いを、拡張機能・情報と人材・表示速度・更新作業・実績の5項目で比べた表
どちらにも得意と不得意があります。とくに「情報・人材」と「実績」はWordPressが大きく上回ります。

得意なこと

  • ページを軽いHTMLで届けやすく、表示速度を詰めやすい
  • サーバー側で動く部品が少なく、PHPの更新という作業がない
  • 管理画面の入力項目を、サイトに必要なものだけに絞れる

弱いところ

  • 2026年に公開されたばかりで、日本語の情報も扱える人もまだ少ない
  • プラグインが少なく、WordPressなら入れるだけで済む機能を自作することが増える
  • 更新はゼロにならない。EmDash本体やnpm(サイトの部品)の更新は続き、このサイトでも1.x系への更新ではデータベースの移行作業を手で流した

EmDash自体の紹介はEmDashとは何かをまとめた記事に、PHPの更新が要らない理由と残る責任はEmDashとPHP脆弱性の記事に書いています。

続けるか、移るかの目安

決め手は、サイトの機能がどれだけプラグインに頼っているかと、更新をだれが担うかの2つです。

WordPressを続けるか移るかの目安。プラグインが要の機能や保守が回っているならWordPressのまま、記事とページ中心や更新の担い手がいないなら移行候補
緑はWordPressのままが合うケース、オレンジは移行を考えてよいケースです。

WordPressのままでいいサイト

  • 会員・EC・予約など、プラグインが機能の中心になっている
  • 保守を頼んでいる会社があり、更新の担当と手順が決まっている
  • 社内にWordPressを触れる人がいて、更新に困っていない
  • レンタルサーバーの会社が、PHPの更新を引き受けてくれている

移行を考えてよいサイト

  • 中身はお知らせ・記事・固定ページが中心で、プラグインへの依存が少ない
  • 更新を担う人がいなくなり、サーバー側の更新を抱えたくない
  • デザインを作り直すリニューアルを予定していて、表示速度も詰めたい

どちらを選んでも残る作業

WordPressでもEmDashでも、サイトの手入れは続きます。WordPressなら本体・プラグイン・PHPの更新、EmDashなら本体とnpm依存の更新です。違うのは、更新の対象と、それをだれが担うかです。このサイトでは、部品の更新を手元で確かめてから反映しています。

移行を決めた場合の進め方は、はじめての方向けにWordPressの引っ越しで何をするかを、制作者向けにWordPressからEmDashへ移行する手順をまとめています。

よくある質問

WordPressは危ないから、移ったほうがいいですか

いいえ。改ざんの多くは、更新されていないプラグインやテーマが入り口です。本体・プラグイン・PHPを更新し、使っていないものを消し、ログインを2段階認証にすれば、WordPressでも安全に運用できます。危ないかどうかは、CMSの種類より更新の体制で決まります。

EmDashに移れば、保守はいらなくなりますか

なくなりません。PHPの更新はなくなりますが、EmDash本体やnpm依存の更新は続き、新しいCMSなので版が上がるときに手作業が要ることもあります。保守が減るかどうかは、サイトの作りしだいです。

一部だけ別の仕組みに移すことはできますか

できます。たとえば、ブログだけを別の構成にして、会員機能はWordPressに残す分け方もあります。ただ、管理する場所が2つになるので、それぞれの更新の担当を決めてから進めます。

まとめ

「脱WordPress」は、WordPressがだめだから選ぶものではなく、サイトの機能と更新を担う体制に合う方を選ぶ、という話です。基準はサイトの作りと体制です。

綴(Tsudzuri)では、WordPressのまま改善する案と、EmDashなどへ移る案を、同じ重さで比べてご提案しています。今のサイトの機能と更新の体制を伺えば、どちらが合うかを具体的にお伝えできるので、お問い合わせからご相談ください。

本記事は2026年10月時点の情報です。